心美は、自分が何を言われたのかわからなかった。

「宏美がどうしたんですか?

交通事故に遭って、何があったんですか?」

嫌な予感を感じた。

スマートフォンを握っている手は震えている。

「――道路を飛び出してきた男の子をかばって、トラックにひかれて…たった今、息を引き取ったって…」

宏美の母親が告げた。

「――えっ…?」

心美は目の前が真っ暗になったような気がした。

(ウソよ、そんなのウソよ…!)

誰かが悪い夢を見せているに違いない。

宏美が死んだのは、何かの間違いだ。

ウソだ、絶対にウソだ…!

心美は自分に言い聞かせて、事実を否定しようとした。

だけども…膝から崩れ落ちて、心美はその場に座り込んだ。