その顔はやつれていたけれど、宏美によく似ていた。

母親だから当たり前かと、心美はそんなことを思った。

「宏美は、きっと望んでいるから」

そう言った宏美の母親に、
「――はい…!」

心美は首を縦に振ってうなずいた。

返事をしたことに、宏美の母親は潤んだ目で微笑んだ。

「じゃあ、またね。

たまにだけど、家に遊びにきていいからね」

そう言った宏美の母親に、
「はい」

心美は返事をした。

「ありがとうございました、さようなら」

「はい、さようなら」

その場で宏美の母親と別れると、心美は歩き出した。

そっと、心美は左手の薬指に身につけているビーズの指輪に視線を向けた。

「外すのは、家に帰ってからでいいか」

心美はそう呟くと、指輪から目をそらした。