「地獄、ですか…」

「それが嫌なら、自分が“宍戸宏美”だと言うことを周囲に隠すんやな」

そう言った神様に、
「はい」

宏美は呟くように返事をしたのだった。

「生前と逆の性別で生きること、周囲に自分の正体を隠すこと――これが“復活”の条件や」

神様がポンと手をたたいたら、紙と白い羽がついたペンが現れた。

「誓約書や」

宏美は神様の手から誓約書を受け取った。

そこに書いてあったのは、先ほど神様が話していた条件だった。

「理解したら、下の欄に自分の名前を書き」

神様の手からペンを受け取ると、宏美はそこに自分の名前を書いた。

書き終わった瞬間、紙とペンが自分の手から消えた。

「契約成立や。

ほな、新しい自分の人生を謳歌しぃや」

神様はそう言って宏美に笑いかけた後、この場から消えたのだった。