(私は宏美が好きで、宏美も私のことが好きなんだ…。

私たちは両思いになれたんだ…)

幼なじみのままでいいと、そう思っていた。

宏美のそばにいることができるならば、このままでもいいと思っていた。

彼は鈍いから、自分の気持ちに気づくことはないんじゃないかとそう思っていた。

「でも、鈍いところも全部ひっくるめて宏美のことが好きだよ」

そう言った心美に、
「鈍いところもって…」

宏美は呆れたと言うように、言い返したのだった。

そんな宏美の様子がかわいくて、心美は彼と自分の手を繋いだ。

「どうした?」

そう聞いてきた宏美に、
「手を繋いだらダメ?」

心美は聞き返した。

「医者か看護師がくるかも知れないぞ」

「その時はすぐに手を離すから」

そう言いあいながら、宏美と一緒に笑った。

久しぶりに繋いだ彼のその手は大きくて、男らしかった。

 * * *