「バカ!」

宏美が怒鳴った。

彼が怒鳴った姿を見たのは、今日が初めてだった。

「自分が刺されれば…なんて、そんなことはジョーダンでも言うな!」

怒鳴っている宏美の姿に、心美はどうすればいいのかわからなくて戸惑った。

「…悪い」

そんな心美の様子に、宏美が謝った。

「…そうだよね、ごめんなさい」

心美も先ほどの発言を謝った。

「俺は…心美がいなくなるのが怖いから、言っているだけ」

宏美が言った。

(えっ?)

その言葉に、心美は耳を疑った。

「それ、どう言う意味なの?」

思わず聞き返したら、
「えっ?」

宏美も聞き返した…けれど、すぐに自分の発言を思い出したようだった。

「――心美が好きなんだ」