「おい、もういい加減にしろ…」

宏美は怒ったように言って清水に声をかけたが、すぐにやめた。

彼女の様子がおかしいことに気づいたからだ。

心美は、自分の背筋がゾクッ…と震えたのを感じた。

(何なの、これ…?)

こんなにも人が怖いと思ったのは後にも先にも、これが初めてのことだろう。

「――のよ…」

清水が何かを言っているが、聞き取ることができなかった。

「――ッ、おい!」

清水がブレザーのポケットに手を入れて何かを取り出した瞬間、宏美は声をあげた。

(う、ウソ…!?)

清水が取り出したものは、カッターナイフだった。

「――あんたなんか…宍戸くんの幼なじみなんでしょ…?」

そう呟いている清水の顔が自分に向けられていることに、心美は気づいた。