心美は腰をあげると、
「私、ちょっとトイレに行ってくるね」

そう言って、宏美の自室を後にしたのだった。

逃げ込むようにトイレに入ると、心美は深呼吸をした。

「――どうしよう、かっこよかった…」

心美はそう呟くと、両手で隠すようにして顔をおおった。

ギターを弾いているその姿も歌っているその姿も、どれも自分が知らない宏美の姿だった。

その姿に心臓がドキドキと鳴っていて…冷静になることができない自分に、心美はどうすればいいのかわからなかった。

それらに対して思い当たることがあるとするならば、ただ1つだけである。

「――私、宏美のことが好きなのかな…?」

心美は呟いた。

幼なじみとしてではなく男として、自分は宏美のことを意識してしまっているのかも知れない。