「それで充分だよ」

そう言った宏美に、心美の心臓がドキッ…と鳴った。

(ああ、まただ…)

ずっと隣にいた幼なじみのはずなのに、彼を意識してしまっている。

(何なんだろう…。

私、すごく変だ…)

その気持ちに戸惑っていたら、
「心美?」

宏美に名前を呼ばれた。

ハッと我に返って視線を向けると、
「フルーツポンチ、食べないの?」

宏美はフルーツポンチを食べていた。

「わ…私は、さっき味見をしながら食べたから、もういいかな…」

宏美に心臓の音を聞かれるのが怖かったので、まるで呟いているようなしゃべり方しかできなかった。

「ふーん、そうか」

宏美はそう言うと、スプーンですくったフルーツポンチを口に入れた。