その歌声に、心美は引き込まれた。

(これ、宏美の声なんだよね…?)

自分がよく知っている宏美の声とは違っていた。

男らしくて低いその歌声に、心美は引き込まれてしまっていた。

心臓がドキドキと、早鐘を打っている。

部屋はエアコンが効いているはずなのに、頬が熱いのは何故だろうか?

宏美が歌い終えた。

「――す、すごいね…」

出てきた感想は、まるで呟いているみたいだと心美は思った。

たったそれだけしか言えない自分に、心美は呆れたくなった。

(もっと他に、いろいろと言うことがあるでしょうが…)

自分のボキャブラリーのなさを、心美は心の底から呪っていた。

「本当に、音楽の才能のあると思う…。

幼なじみのひいき目とかじゃなくて、本当に…」

呟くようにそう言った心美に、宏美は微笑んだ。