「先日の休みにいとこの兄ちゃん家に遊びに行ったらさ、兄ちゃんがこれを捨てようとしてたんだ。

1人暮らしをすることになって実家を出ることになったから、いらないものは処分しようみたいな感じで」

宏美は言った。

「そう言えば、フォークソングのサークルに入ってたって言ってたよね」

思い出したように言った心美に、
「新品同様みたいにキレイだし、どこも悪いところがなかったし、何より捨てるのはもったいないと思ったから、兄ちゃんに頼んで譲ってもらった」

宏美は説明した。

「へえ、そうなんだ」

心美は返事をした。

「今、弾けるように練習してるところ」

宏美はそう言うと、机のうえに置いてあったギターの教本をガラスのローテーブルのうえに置いた。