弟のような存在だった宏美を意識したのは、中学生になってからのことだった。

心美と宏美は吹奏楽部に入部した。

心美は希望通り、フレンチホルンを担当することになった。

一方の宏美はフルートかトランペットの担当を希望していたのだが、それまでドラムを担当していた先輩が卒業してしまったため、顧問の薦めでドラムを担当することになった。

今振り返ると、これが宏美がバンドの道へと進むきっかけだったんじゃないかと思う。

リズムよくドラムをたたいている宏美のその顔は、とても楽しそうだった。

(楽器はこれが初めてなんだよね…?)

まるでなれたようにリズムを刻んでいる宏美を見ながら、心美は心の中で呟いた。

宏美の中にあった音楽の才能が開花したのは、この当時だった。