「バカ、俺は男だ」

そう言い返した宏美に、
「躰は女だ」

モアイ像は何クソと言わんばかりに言い返した。

「女としての幸せを楽しむって言うのもありなんじゃないか?」

そう言ったモアイ像に、
「…それは、俺も一瞬だけ思った。

俺が幸せになれば、心美も幸せになろうと思うんじゃないかってそう思った」

宏美は言い返した。

「じゃあ…」

「だけど、まだできない」

モアイ像の言葉をさえぎるように、宏美は言った。

「俺の目的は、心美が俺のことを忘れて幸せになること、ただそれだけだ。

心美を幸せにできなかった分、俺は“ミヒロ”としてそれを見守ろうと思ってる」

「見守るって、自分で彼女を幸せにしてあげようとは思わないのか?」

そう言った宏美に、モアイ像が聞いてきた。