「ごめんな、嫌なものを見せたうえに君とつきあっているなんて訳がわからないことを言っちゃって」

小祝は自嘲気味に笑いながら言った。

「家、そんなにも複雑なんですか?」

宏美は聞いた。

小祝は宏美が笑っていなかったので、笑うのをやめた。

「まあ…見ての通り、うまく行っていないんだ」

小祝は息を吐いた。

「実家は水産加工食品の製造業をやっているんだ。

すぐ近くに工場があるからか、魚の生臭い匂いが本当にすごくってさ。

それのせいもあってか、野良猫だ害虫だねずみだとかの被害が発生してた」

小祝はそこで言葉を区切ると、
「…本来だったら、15歳年上の兄貴が親父の会社を継ぐはずだったんだ」
と、言った。