「何や?

お前は“この世”にまだ未練が残ってるんやろ?

わしの間違いで死んでしまったとは言え、お前はどうしても生きないといけない理由があるんやろ?」

そう返事を返してきた神様に、宏美は目をそらすようにうつむいた。

「なのに、躊躇する理由がどこにあるんや?」

「――ッ…」

宏美の頭の中に浮かんだのは、“彼女”の顔だった。

(俺はあいつをこの手で幸せにすることができなかった。

だから、今度はあいつを見守って、あいつの幸せを願うんだ…)

宏美は深呼吸をすると、顔をあげた。

「――“復活”します」

宏美は言った。

「ほな、話は早い」

神様はグルリと腕を回した。

「それじゃ、行きましょか」

神様がモゴモゴと口の中で呪文を唱えたその瞬間、宏美の視界がグラリと揺らいで目の前が真っ暗になった。