「これ、元々はいとこの兄貴のものだったんだ。

本当は捨てることになってたんだけど、譲ってもらった」

宏美はそう説明をすると、アコースティックギターを手に持った。

「ミヒロとしてこれを持ったのは初めてだな」

チューニングをしながら、宏美は呟いた。

「エレキだけじゃなくてアコギも弾けるんだな」

そう言ったモアイ像に、
「まあな」

宏美は言い返した。

「何だか無性に弾きたくなった」

宏美はチューニングを済ませると、ピックを手に持った。

「弾ける曲はあるのか?」

「あるよ」

モアイ像の質問に答えると、宏美は弾き始めた。

宏美は弾きながら、歌を歌い始めた。

曲は、村下孝蔵の『初恋』である。