「でも、鈍いところも全部ひっくるめて宏美のことが好きだよ」

心美が言った。

「鈍いところもって…」

宏美は嬉しかった。

(あの時は気持ちを伝えてから死にたいなんて思ったけど、死にたくないな。

と言うか、死んだら困る)

そんなことを心の中で呟いたら、心美に手を握られた。

「どうした?」

突然のことに聞いた宏美に、
「手を繋いだらダメ?」

心美に聞き返された。

「医者か看護師がくるかも知れないぞ」

「その時はすぐに手を離すから」

クスッと笑いながら言った心美に、宏美も一緒になって笑った。

「面会の時間が終わるまで、このままでいい?」

そう聞いてきた心美に、
「いいよ」

彼女の手の温度を感じながら、宏美は答えた。

 * * *