自分の血で染まって行くハンカチを見ながら、宏美は自分の意識がぼんやりとしかけていることに気づいた。

(ああ、俺は死ぬのかな…?)

心美が泣きながら宏美の名前を叫んで、血を止めようと必死になっている。

その様子を見ていたら、宏美の目から涙がこぼれ落ちた。

(このまま死ぬのは嫌だ…!

せめて…せめて、心美に俺の気持ちを伝えてから死にたい…!

ずっと好きだったことを心美に言ってから、死にたい…!)

その時、救急車が校庭に入ってきた。

「ケガ人はどちらですか!?」

救急車から降りた隊員たちの声が聞こえた。

「こっちです!

ここです!

早くしてください!」

心美が大きな声で叫ぶように、隊員たちを呼んだ。

それまで自分の周りにいた野次馬が隊員たちのために道を開けた。

その瞬間、宏美は目の前が真っ暗になった。

 * * *