目を開けると同時に涙が頬を伝っていった。

 ゆがむ視界の先に星弥はいなくて、薄暗い天井が無表情にあるだけ。
 ゆっくり体を起こし、夢だったと理解する。
 夢のなかでは『これは夢』だとわかるのに、目覚めたときはどちらにいるのかわからなくなることはたまにあった。

 ベッドから起きあがりカーテンをめくると、まだ窓の外は夜色に沈んでいる。
 時計を見ると、午前三時を過ぎたところだった。
 雨の音がかすかに聞こえている。

「夢だったんだ……」

 あっちが現実で、今が夢ならよかったのに。
 トイレのあと、冷蔵庫からお茶を取り出し飲んだ。
 冷たいお茶が、胃に落ちるのを感じながら、また泣きたくなった。

 久しぶりに星弥の夢を見た。
 これまでもたまに見ることはあったけれど、どれも短い夢ばかり。
 それにしても、不思議な夢だった。
 二年生のときの会話にはじまり、三年生で連れて行ってもらった図書館のことまで。
 こんなに長い夢ははじめてだし、とにかくリアルだった。

『君が好きなんだ』

 今も耳に残る星弥のやわらかい告白。
 あの日の私は、幸せな日々がずっと続くと信じた。
 ふたりで流星群を見られると信じて疑わなかった。

 ――でも、もういない。

「星弥」

 声に出してつぶやけば、やっぱり涙があふれてくる。