「あの……」

「ん?」
 
 私は静かに口を開いた。

「……私を置いてもらえませんか、ここに」

「分かった」

 こんな私のお願いにも、高根沢さんはすぐに返事をしてくれた。

「……ありがとうございます」

「その代わり゙美結゙って呼ぶけどいいよな?」

「え……?」

 高根沢さんは私にそう聞いてくる。

「いいだろ?名前で呼ぶくらい、どうってことないだろ?」

「……あ、はい。いいですけど……」

 いきなり馴れ馴れしいなぁとは思ったけど、ここに置いてもらう以上、文句は言えない。

「じゃあ美結、まずはスマホ買いに行くぞ。買ってやる」

「え?」

「スマホだよ。新しくするぞ」

 そう言われた私は「あ、はい……」と返事をした。

「俺も一緒に行くから。 着替えてくる、ちょっと待ってろ」
 
 タバコの火を消した高根沢さんは、寝室らしき部屋に行った。 

「高根沢……さん」

 高根沢さんは優しい人、なのかな……。
 でも身寄りのない私をこうして家に置いてくれて、スマホまで買ってくれると言ってくれた。
 優しいんだよね、多分……。

「美結、行くぞ」

「あ、はい……」

「あ、美結の服も必要だよな。下着とか」

「っ……!」

 し、下着……!?

「だって着替えもないんだろ?」

「……ないです」

 ここには死ぬつもりで来たのだから、着替えなんて持ってきていない。

「じゃあ服も買いに行くぞ」

「……はい」