「猛……っ」

 私は猛のことが怖い。猛を見ると震える。
 怖くて仕方ない……。

「俺は美結のこと、好きなんだ。 分かってくれるだろ?」

 そうやって私を洗脳するみたいに、猛はいつも言ってくる。
 私は猛に洗脳させている。……猛からは、何をしても逃れられない。
 私は猛と別れることも出来ないし、そんなことさえも許されない。

 逃げようとしたことだってあった。逃げようと試みた。 だけどすぐに見つかって連れ戻されて、また暴力を振るわれた。
 私はそんな日々の繰り返しだ。

 生きる理由なんてどこにもない。生きていることにも、疲れた。   
 もうこの世からいなくなりたい、もう死にたい。……いつしか私は、そう思うようになった。

 毎日暴力を振るわれて、辛い日々を送るしかないだなんて辛すぎる。
 警察にだって行った、何度も相談した。 でも警察は何もしてくれなかった。
 警察は、私を助けてくれなかった。

「……美結、好きだよ」

「んっ……猛っ……」

 猛から逃げたいのに、逃げられないという現実が怖い。

「美結……」
 
 私は猛に逆らうことなんて出来ない。逆らったらまた殴られるだけ。
 だから私は、猛の言うことを聞くしかないんだ。……猛のそばにいても、私は幸せになんてなれないって分かっている。

 だからこそ、私は今の現実から逃げたいの。
 この世界からいなくなって、楽になりたい。……楽になりたいの。