「じゃあ呼んでみろ」

「え!? 今ですか?」

 そう聞くと、大和さんは「今だ」と即答してきた。

「……大和、さん」

「よく出来たな」

 そう言ってフッと笑う大和さん。

「あの……大和、さん」

「なんだ」

「ありがとうございました。……おかげで少し、楽になりました」

 これも大和さんのおかげなんだと思うと、感謝の気持ちしかない。

「私……少しだけですけど、前を向けそうな気がします」

「……そうか」



 だけど私は、その日の夜も眠れなかった。 何も考えないようにしても、どうしても思い出してしまうんだ。
 ……猛のあの暴力を振るう時の顔が、あの時の怖い目が。

「っ……」

 思い出すだけで震える。思い出すだけで怯える。

「やめてっ……」
  
 あの殴られた時の感触が、声が、言葉が……私を支配する。

「やめてっ……お願いっ……やめてっ」
  
 私が悪かったから……。私が悪かったの……。

 ここに猛はいないのに、どうしてもいるように感じてしまうんだ。

「猛……ごめんなさいっ……」

「……美結?」

 そんな私の様子を見て、大和さんは布団から視線を向けていた。

「ごめんなさいっ……許してっ……」

「美結!大丈夫か!?」

 そしてすぐに私の元へと来てくれた大和さんは、そんな私のことを抱き寄せた。

「ごめん、なさい……」

「美結、大丈夫だ。……猛はここにはいない。大丈夫だ」