「どうですか?こんな感じで」

「え……あっ」

 ウソ……。これって本当に私……?
 なんだか私じゃないみたい……。

「似合ってますよ」

「あ……ありがとう、ございます」
 
 こんなに短く切ったのは、何年ぶりだろう。こんなに短い髪の私なんて、見たことない気がする……。

「へぇ、似合ってんじゃん」

 高根沢さんも、鏡に映る私を見てそう言ってくれた。

「本当ですか?」

「ああ。 これで気分も少し、軽くなったか?」

 そう聞かれた私は「……そうですね。なんだか少し、スッとしました」と答えた。

「なら良かった」

 こんな私にここまでしてくれる優しい人、今までいただろうか……。
 
「美結、今度はカラーしてもらえば?」

「……え?」

「カラーしたらまた、気分が変わるかもな」

 高根沢さんはそう言ってくれた。

「それにしても大和。お前がまさか女を連れてくるなんてな。驚いたよ、彼女か?」

「はっ!?……ちげぇから」

 慌てて否定した高根沢さんだけど、私を担当してくれたスタイリストさんは「そうなのか? なんだ、彼女じゃねぇのか」と残念そうな表情をしていた。

「コイツはちょっと、訳ありでな」

「訳あり?」

「ああ。……それでコイツを保護してるって訳」

 スタイリストさんは高根沢さんのその言葉に納得したみたいで「なるほどねぇ」と頷いていた。

「ってことで。帰るぞ、美結」

「え? あ、はい!」