「なあ、美結」

「……はい。何でしょうか」

 フードコートでオムライスを食べながら、高根沢さんは私を見つめる。

「美結のこと、俺は助けて良かったと思ってる」

「……え?」

「美結は今、生きてるからな」

 高根沢さんのその言葉に、私は涙が出そうになった。  

「もし死んでたら、こんな美味いオムライス食えないだろ?」

「……そう、ですね」

 確かに、高根沢さんの言う通りだ。こんなに美味しいオムライス、食べられなかったかもしれない……。

「美結。生きていれば、きっといいことがある」  

「……ありがとう、ございます」

 高根沢さんの言葉は力強くて、だけど胸に刺さる何かがあった。
 グッと突き刺さって、なぜか重たかった。

「美結、ソフトクリーム食うか?」

「……え?」

「ソフトクリーム、食うか?」

「……いえ、大丈夫です」
 
 と答えると、高根沢さんは「じゃあ俺は、ソフトクリーム買ってくるかな」と席を立った。
 私は高根沢さんのその後ろ姿を見ながら、ちょっとだけホッとしていた。

 高根沢さんの優しさに、私は救われていた。 私は今日一日の中で、心がすっと軽くなった気がした。
 これも全部、高根沢さんのおかげだ。

「美結、ソフトクリーム美味い」

「そ、そうですか……」

 高根沢さんは……私をどうして助けてくれたんだろう。

「なんだ。やっぱ、食べたいのか?」

「い、いえ……大丈夫です」