「はぁ.....。これからどうしろって言うんだよ。他の奴らも来てるって言ってたけど。てか、国王ってなんだよ。意味わかんねー」
「でもさ、どうせやるなら、僕は負けたくないんだよね〜」
時々よくわからないところで負けず嫌いを発動する深澤。
 でも、今回ばかりは、私も同意だ。どうやったら帰れるのか行ってなかったけど、とりあえず、目の前の事をどうにかしないと。

「負けたくないって言ってもよー、試練は1週間後なんだろ?それまでは何もできないじゃねーかよ。」
「そういえば、人に頼らず生活してって言われたっけ。でも、ここ、家も何も、なーんにもない草原なんだけどなぁ」

「なんか、人が住んでない家見つけて、瞬間移動でもできたら楽なのになぁ」
「ねぇ、今、瞬間移動って言った?」
「お、おう。言ったけど?」
食い気味に聞く私に驚きつつ答えてくれた。ここは異世界。それなら、魔法かなにかが使えても、なんら不思議じゃない。こういう時、アニメなら、
「ステータスオープン」
『え?』
手首の上あたりが光ったかと思うと、急にパネルのようなものが表示された。わぁ、すごい!ここは、本当に異世界なんだ!


「例えばさ、使いたい魔法の言葉?みたいなのを詠唱すれば、魔法使える、とかじゃない?」
「言葉とか詠唱とかはよく分かんないけど、やってみるか!」


 小一時間は経っただろうか。色々な方法を試したが、瞬間移動どころか、きっと簡単な魔法なのであろう、火を起こす、とか水を出す、とかすらできなかった。
「呪文みたいなのすらないし...。字を書いてみてもダメだし、って言うか、この国の言語って日本語なの?」
「なんにもわからないからね、エリアナもせめて、姿を消すなら、もう少し説明してからにしてくれればよかったのにねぇ」
深澤とともにこの世界とこの状況を嘆いていると、深沙が
「魔法って難しいね〜。とりあえず、喉乾いたから、水だけでも出せたらなぁ」
と、水筒を開けながら言った。


 その時だった。水筒の上で水ができて、水筒に入っていった。
「え?」
「ねえ、深沙今何したの?」
「え、えっとね、せめて水だけでもって思って、空中から水が出てきたらいいのに。って思いながら水筒を開けた、だけなんだけど、、、」
うーん。私たちが今までやっていたことと、何が違うんだろう。


ボッ。
そう音がしたかと思うと、私たちの近くに火が灯った。
「わかったぞ!想像すればいいんだよ、俺、今、ここに焚き火ができたらいいのに、と思って、火、出ろーって言ったから。桐谷と一緒だろ?」
よほど嬉しかったのか、子供っぽく笑う新垣。
「えっと、じゃあ、風、起れ!」
私がそう言うと、小さくだが、竜巻のようなものが起こった。
「え、すごいすごい!」
年甲斐もなく興奮してしまう私たち。


「じゃあ、水も!水筒を開いてっと。水よ、出ろ!」
あれ、出ない。
「あっれ〜?なんでだろう、出ないなぁ」
「深沙、もっかいやってみてよ」
「うん〜、いいよ。水よ、出ろ!」
もう魔法が様になってきている。深沙がやると、ちゃんと出るのだ。なんでだろう。

 同じところから来たばっかり、特になんの違いもないはずなのに...。
「ねえ、伊藤〜。お得意のアニメの知識で、なんか知ってることないの?w」
「急かさないでよw考えてるところだからー」
軽口を叩きつつも考える。アニメなら、、、
「ーーーー。あっ‼︎ステータス、ステータス見て‼︎」
「え、なんだよ」
「いいから、早く!」
「お、おう。ステータス、オープン」


やっぱりだ。新垣には火の適性がある。深沙には、水の適性が。
「で、なんだったんだよ?1人で納得されても困るんだぞww」
「わかってるってwえーっとね、多分、ここ異世界だから、属性ってものがあって、ひとりひとり、適性が決まってるんだよね。単数か複数かはわからないけど。それで、新垣には、日の適性があって、水の適性はない。でも、深沙には水の適性があった。だから、すぐに水が出せたんだよ」

「.....前からおもってたけどさ、伊藤って、アニメの話とかになると、急に頭良くならない?」
「俺も思ってた」
「私も」
「なんか言った?」
『いえ、何も』
「それで、私はきっと風の適性があって、深澤は、なんだろうね?」
勢いよく話してしまったが...。
 
 不安になって3人の方を確認すると、魔法に夢中だった。