第2の試練の2日後の朝。
春香は姿を消した。

「おい、春香見なかったか?」
「え〜、部屋じゃないの〜?」
「いないから言ってんだろ!?寝ぼけてる場合じゃないんだよ、深沙も洸太も!春香がいなくなったんだよ!‼︎」

「で、なんだって?」
俺は動揺しつつも状況を説明した。しどろもどろになりつつも状況を説明した。起きたら春香がいなかったこと。そして、、、メモが置いてあったこと。
「メモには、『ごめん、迷惑かけると思う。でも、気にしないで。少ししたら戻るから。私に時間割かないで。』って書いてあるわけか。」
「春香に何があったんだろ、やっぱりあの時、何か言われてたのかな?」
「おそらくそうだろうね。様子がおかしかったし。」
「麻生のやつ、余計なことを、、‼︎」
カッとなって、すぐにでも麻生を探し出して、事情を聞き出してやりたい。
「落ち着け、今何かしようとしても逆効果だから。どうしようか考えよう」

俺が気が付かないなんて。なんでだ。焦りと責任で話が頭に入ってこなかった。
「涼、いいから落ち着いて。焦るのもわかるけど、落ち着いて。そろそろバイトの時間にもなっちゃうし、これからのことを考えないと。」
「とりあえず、今日はバイトに行こう。春香がいないこと、上手く誤魔化しといてくれる?」
「任された」
「春香がいる場所に心当たりないか考えといて。」


そう言って俺たちはバイトに向かった。
正直言って、バイトどころではなかった。俺は、春香とのことを思い出していた。


〜3年前〜
「涼、ここ教えて?算数まっじでわかんない。得意でしょ」
「はいはい、わかったから。で、どこだよ」
「ここ。場合の数なんだけど、全然わかんない〜」
俺と春香は同じ小学校で、同じ塾だ。クラスも同じことが多かった。学力が同じぐらいだったから。ふと志望校の話をしているときに、同じ志望校だということがわかってからは、仲良くなって、学校の図書室とかで一緒に勉強をするようになった。
 お互いの得意分野が違うから、勉強を教え合ったりもした。

 合格発表の日。2人で親と一緒に合格発表を見に行った。2人で受かっていることを喜んで、春香は言った。
「中学でも仲良くしてね!」

 だが、そうはならなかった。新学期、俺たちは違うクラスだった。隣のクラスでもなく、クラスが離れてしまった。そして、話すこともなくなった。廊下ですれ違っても、会釈すらするかしないか。そんな日々が1年間続いた。

 2年になって、クラスが一緒になった時は嬉しかった。小学校の時のように、また仲良くなれると思ったから。でも、春香は変わっていた。クラス替えしてもクラスに馴染む。そういうのが得意そうだったから、馴染めてないのが意外だった。だからと言って、話しかける勇気もなかった。
 だから、深沙が春香に話しかけて、もう一度仲良く慣れたのは嬉しかった。前より距離が遠くなったのは少し残念だった。
 こっちにきて、前までのように、名前で呼び合えるようになって嬉しかった。部屋をじゃんけんで決めたのは、洸太が気を利かせてくれたから。俺が、春香と部屋一緒になりたいなんてひそかに思っていたのがバレてしまったのだろう。春香にもよく言われた。「顔に出やすいんだね〜w」って。
 

 俺は春香が好きなんだ。小学校の時から。塾で一緒だった時から。勉強を教えあってきたときから。だから、春香がいなくなった時、人一倍焦ったんだ。
 俺は...
「おい、リョウ‼︎手が止まってんぞ、集中しろ、作業に‼︎」
「はいっ!すみません!!」
(おい、いくら春香が気になるからって、バイトに集中しろってw)
(やっぱ、ばれてた?俺、バイト終わったら、やっぱり探しに行く)
(はいはい、そういうと思ったよ。深沙もそういうだろうけど、そこは止めとくから)