試練当日。
 試練の会場となったのは、街の中央にある広場。アリアナが仮設した会場に、街の人々がたくさん訪れていた。
「わあ、人多いなぁ、これで、また2組落とされるんじゃないかと思ってるんだが、どうだろーな?」
「涼。不安にさせないで。ただでさえ緊張して、どうにかなりそうなのに。」
「深沙、落ち着いて」
「ーーーーー」
麻生夏。勝負をするにしても、この試練は団体戦。おそらく総当たり選ではなく、トーナメントになるだろうから、当たるかどうかもわからない。一体どうするつもりなのだろう。
「、、春香?きいてるか、おい」
「あ、ごめん、考え事してた。なんだって?」
「そろそろ時間だ。行くぞ」
「おっけ」
深呼吸をして、会場に目を向ける。改めて見るけど、大きい会場だ。緊張してる場合じゃない。やるからには、勝つ。そう決めたんだから。


『魔法対決へようこそ!まずは、一回戦!』
『カコチームvsナツチーム、ready go!』
魔法での対決が始まった。

 ルールはいたって簡単。魔法を使うこと。ただし、魔法も使っているのならば、体を使っての直接攻撃もあり。相手を全員、場外または、降参、戦闘不能にすれば勝利。
 いい勝負だった。ナツチームは、魔法、直接攻撃共に強い。男子2人が直接攻撃重視、女子2人が魔法重視と言った感じだ。
『勝負、ナツチームの勝利!』
10分ほどで終わった。見てる限りナツチームは普通に強そうだった。でも、まずは一回戦を勝たなくては。

『ミサチームvsカナデチーム、ready go!』
私の心配はすぐに吹っ飛んだ。洪太、涼、深沙が、思っていた以上に強かった。私のやることは援護ぐらいしかなかった。
『勝負、ミサチームの勝利!』
5分ほどで、全員場外。私たちの勝ちだ。

「洪太、想像以上に強いね」
「ほんと、私なんて、ほぼ魔法使ってないよ」
「ほぼ直接攻撃しかしてなかったぜ」
「僕たち、意外と強いのかもしれないね」

観客も盛り上がっていた。モカさんやマサさん、マランさん、エレンさんもみんな見に来てくれていて、娯楽の一種と思って楽しんでくれているみたいだ。アリアナは、王選だということを言ってないみたいだから、よかった。

1回戦の後、30分ほどの休憩兼作戦を立てる時間が与えられ、私たちはその時間を十分に使い、作戦を立てることができた。

『決勝戦は、ナツチームvsミサチーム、ready go!』
 ついに、決勝戦が始まった。
麻生夏は予想通り、開始早々、私に攻撃を仕掛けてきた。
「団体戦になっちゃったけど、伊藤春香、あなたと戦うわ。」
そう言って、水魔法と火魔法を使ってくる。一見相性の悪そうな適性だが、上手く使いこなしていて、風魔法で逃げまわりながら、策を考えるので精一杯だった。
私は1回のチャンスに賭けた。
「火よ出ろ!」
かろうじて使えるようになった初歩的な火魔法で相手に隙を作り、そこを風魔法で攻撃し、場外へ出す作戦だった。その作戦は成功した。
、、、が、私は油断した。火魔法で攻撃をされて、バランスを崩した。上手く風魔法を発動できない...!
「危ねぇ、‼︎よし、今だ、やれ‼︎」
涼に引っ張られ、火魔法を避け、風魔法を発動することができた。

「くっ、、、‼︎」
麻生夏は場外。倒した、!よかった。そう思って気が緩んだのがいけなかった。
「危ない!」
深沙の声が聞こえてすぐ、背中に痛みが走った。
「え、嘘、」
私は、涼を巻き込んで、場外へと飛ばされた。

「ごめん、ほんと。私を助けたせいで、巻き込まれて...!」
「油断してた俺が悪かったんだよ。春香のせいじゃない。それよりも、洸太と深沙を信じよう。」
「う、うん」
涼を巻き込んだ上に、気を遣わせた。油断してた、ほんとに。残った2人を信用していないわけではないけど、やはり、心配だ。大きな戦力だった、涼が私のせいで、、、

でも、本当に心配はいらなかった。あっさり勝つわけではなかったけど、人数で不利になっても、劣勢になることはなかった。さすがは深沙と洸太だ。

 10分ほどの激しい戦いの末、洸太1人残って、私たちの勝利となった。
『勝負、ミサチームの勝利!』