「そこで風を起こして、そう。そうすれば、ある程度の硬さのものなら切れるから。」
「わかった。ものが来た瞬間ね?」
「そう」
「おい、春香。試しに火の魔法も試してみたらどうだ?」
「なんでよ、適性ないよ?」
「適性なくても、簡単なのだったらできるかもしれないし。ちょっとでも使えるものが増えた方が戦いやすい。」
「そうだね、じゃあ、コツを教えてもらえる?」
「待って、後ででいいけど、風魔法の練習を一緒にして〜」
「うん、後でね」
こんな調子で、私たちは魔法の練習を重ねた。流石に部屋の中で練習するわけにもいかないから、レポのオーナーさんに話をして、レポの裏を使わせてもらうことにした。裏は思いの外広く、魔法を練習するにはうってつけの場所だった。
 
 バイトをサボるわけにもいかないので、夜ご飯を食べ終わったあと、夜食を持って、レポの裏に行き、魔法の練習をした。夜中の11時から2時くらいだから、大きな声は出せないが、それ以外は特に困ったこともない。
 麻生夏に勝負を申し込まれていることもあり、いつも以上に練習に励んだ。
 その甲斐あって、私は適性のない火の魔法の、本当に初歩的なものだけだが、使えるようになった。あとは、風の魔法を前よりも上手く扱えるようになった。3人は複数適性があるから、私より大変だったと思うが、元々要領がいいため、効率よく練習できていたようで、試練の前日には、みんな、ばっちり準備が整っていた。