「春香、大丈夫だった?ごめんね、私のせいで」
「ううん、陰口いうあの人たちと、勝手につっかかった私が悪いんだから」
バイトの休み時間中、深沙は見当違いな謝り方をしてきた。

「ううん、違うの。多分、本当に私のせいなの。」
そう言って深沙は、中学受験の時のことを話してくれた。


「私ね、夏とその友達の三夏(みか)、あ、さっき夏と一緒にいた子ね。その2人と一緒にここを受験したの。言ってなかったと思うんだけど、あの2人は小学校も塾も一緒で、東桜学院受けようって言って、3人で受験したんだ。勉強したかいあって、みんな無事に受かって、、、。覚えてる?春香に話しかけた日、私が夏と三夏と一緒にいたこと。あの時くらいまでは仲よかったんだ。でも、、、」
そっか。きっと、昔から仲のいい深沙を私に取られたような気がして、深沙との関係が悪化したのだろう。

「仲、悪くなった?」
「え、う、うん。気づいたらあんまり話さなくなってて、夏休みも近くなって、遊びに誘おうと思っても、なかなか話す勇気でなくて。メッセも送っても見てもらえないかもと思うとなかなか送れなくて。って感じだから、私に不満があるだけだと思うの。春香を巻き込んでごめんね。」
「ううん、気にしないで。深沙何も悪くないから。ほら、早くバイト戻ろ?そろそろ休憩時間終わっちゃう」
「うん、!」


春香とさっきの2人が気まずくなっちゃったのだって、元を辿れば私のせいなのだ。全て私のせいなのに。気を遣わせて、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



「そういや、さっきの、どう思う?」
「さっきのって、麻生夏たちの陰口の話?」
「それもそうだが、つっかかっていった春香もだ。あいつ、あんまりカッとならないんだけどな」
「まだ話すようになって半年も経ってないんだし、そんなのわかんないでしょ。まあ、でも、麻生夏の組は気になるよ。20人がみんなこの街に住んでいるんだ。どこかで鉢合わせしてもおかしくはない。揉め事が起こらなければいいんだけど、、、。」

「おい、口動かしてないで、手ェ動かせー」『はい!』
作業中に話していたため、マサさんに怒られてしまった。

 しかし、つっかかっていったことが普段通りだったとして。あのあと、春香の様子がなにか変だ。俺たちの悪口言われたのが、そんなに腹立ってんのか。
 考えていてもわからないから作業に集中しながら、帰ったら聞いてみようとだけ思った。




夜。
 男子は食材を、私と深沙は、生活用品等を買って帰ってくることになっていた。の荷物が多くて大変だった。
「ごめんね、帰り遅くなって。お店が混んでてさ。すぐ料理手伝うから!」
「そんな慌てないでいいよ。僕が先にやってるから、ゆっくりで」
深沙と洪太がキッチンに行ったため、テーブルに涼と2人になった。

「、、、春香。」
「ん?」
「朝、あそこで何かあったか?」
「、なんで?」
「なんか、いつもより疲れてそうに見えるし、朝から様子が変だったから。何かあったのか?」
涼にそう問われて、咄嗟に返事が出来なかった。相手が涼とはいえ、迷惑をかけるわけにはいかないのに、少し悩んでしまったのは、打ち明けたかったからだろうか。

「、ううんなにも。何にもなかったよ。疲れてそうに見えたのは、少し寝不足だったからじゃないかな。あ、別に、涼のせいじゃないからね?普通に、疲れが取れてなかっただけだと思うから、心配しないで。」
「饒舌な時が、、、」
「ん?なんか言った?」
「んー、なんでもねー。特になんもなかったならいいし。でも、つっかかっていくのはやめろよ?トラブル起こしたりしたら大変だしよ」
「ごめんって。ちょっとカッとなっちゃって」
すぐになんでもない会話に戻った。一瞬焦った、涼に、気づかれていたことに驚いた。気をつけないと。また、みんなに気を遣わせるといけないから。



 その夜は、あまり良く眠れなかった。