次の日からが大変だった。

 まずは仕事探し。深澤が
「いずれは、自分たちで土地を借りて、店を開いて、それで生活できるようになろう」
とか無茶苦茶なことを言い出すものだから、みんな一生懸命にバイトを探した。できれば4人、同じところで働きたかったのだけど、一気に4人も雇ってくれるところはなく、、、。
 
 街中を走り回って、掲示板を見て、バイト募集のところをひとつひとつ回り、、、。

 半日かかって、ようやく、女子が居酒屋、男子は王選に向けての工事の現場に雇ってもらえることとなった。

「よかったな。なんとか、今日中に仕事見つけられて。」
「そうだね、女子2人なんて雇ってくれるとこないんじゃないかって心配だったけど。居酒屋でバイトって言うものなんか楽しそうだからいいよね〜、春香」
「うん、まだバイトってしたことなかったからしてみたかったんだよね。」
みんな午後から働かせてもらえることとなったので、昼ごはんを、合流して食べている。こういうのは、前までと変わらなくて、なんかいいな。と思いつつ、昼の時間を過ごした。


「じゃあ、あと半日頑張るぞ〜!」
『お〜‼︎』


「よろしくね〜、ミサとハルカだったっけ」
『はい!』
「今、王選に向けて準備してるのは知ってるだろ?その作業の休憩とか、普通に人が増えたりしてて、まあ、とりあえず人手不足なんだよ。若い女の子はあんまいなかったしね、助かるよ」
赤いショートカットの活発なお姉さん、モカさんが私たちの先輩となった。この世界では黒髪というのが珍しいらしく、珍しがられるだろう。というマランさんの助言により、私は茶色、深沙は青色、深澤は銀色、新垣は赤色にそれぞれ染めていた。
 私は、校則が厳しく、髪を染められないことに不満を感じていたから、髪を染めた時に1人だけはしゃいでいて、なんか恥ずかしかった。

「それじゃ、テキトーに、接客を頼むよ。注文取ったり、運んだり。わかんないことがあったら聞いてくれ!じゃあ、早速始めるか!」
『はい!』
私たちは半袖にショーパンというここの制服を着て初仕事を開始した。


(なんで、半袖ショーパンなの⁉︎)
(異世界だからかなぁ、てか、深沙はスタイルいいからいいじゃん!?)




同じ頃。
「君たちが新しいバイトか。若くて、よく働いてくれそうだ。頼んだぞ!」
そう大きな声で言われ、バシッと背中を叩かれる。この人は、マサと言って、俺たちを働かせてくれる場所を取り締まってる人だ。
 周りを見回しても、俺たちくらいの年のこどもはいねぇな。クラスのやつはどこで働いてんだろ...

「新垣、ちゃんと聞いとけ」
「深澤、、、。わかってるわ。ちゃんとやるから心配すんなって」

「コウタとリョウだったか、頼んだぞ」
『はい!‼︎』
特に作業着みたいなものは決まってないみたいだが、とりあえずなんもなかったから、バイト代から差し引きということで、Tシャツと長ズボンを貰った。




 次に、この街のことを把握すること。日本の都心なら、10時でも過ぎれば、ちょくちょく不審者っぽい人はいるものだと思っていた(学校は都心でも、家が田舎だから、そういう認識だっただけだが)。この街はマランさんが言っていたとおり、比較的平和になったとのこと。真夜中でも、不審者らしき不審者は見当たらなかったし、事件みたいなのも起こってないみたいだ。

 バイト終わり、一度部屋に戻って男子と合流。そしてすぐ、この街の現状を把握しに、街を歩き回った。日本で12時なんかに子供4人で歩いていたら、補導されてしまう。が、ここは、そういうこともなく、夜もちらほら人がいて、悪目立ちすることもなかった。

「はあ〜。疲れたぁ。早くご飯食べよ〜」
結局、私たちが部屋に帰ってきたのは、1時半ごろだった。明日も朝早くからバイトがあるというのに...
「もう少しでできるから待ってね〜」
「ありがと〜深澤」


「そうだ、思ったんだが、お互い、下の名前で呼び合った方がいいんじゃないか?この国、苗字で呼び合うっていう感じじゃねぇし」
深澤の作ったハンバーグを食べている時、新垣が突然そう言った。
「まあ、確かに。モカさんも私たちのこと名前で呼んでたし。」

「名前かぁ、えっと深澤が洸太で、新垣が...涼?」
「そう」
「おう」
「じゃあ、それでいっか、深沙って呼ぶのはいつも通りだしね」




私たちは少しずつ、この世界に染まりつつある。そう思った。