人間になるカウントダウンが始まった。

 つぼみが育っている。
 少しずつ、少しずつ。

 僕がいるタイミングを見計らってくれているかのように、おじさんが毎回タイミング良く現れ、桜は今どんな状態なのか、丁寧に教えてくれた。

「ありがとう。桜を見に来てくれて。この木はとても大切な思い出が詰まっているものなんだ」

 僕は、もし本当に人間になれる事が出来て、このおじさんに質問出来るようになったら

 『どうしてそんなにその桜を大切にしているの? 食べられるわけではないのに』

って質問をしてみようと思っていた。