……そうだ。諦めたくないって言ったのは、私なんだ。
 ここで無理とか、言ったり思っている場合では、ない!

「わかりました――私は、爆弾を凍らせれば、いいんですよね?」
「ええ。全力で、やっちゃってちょうだい。すべてを凍らせることのないよう、炎の精霊たちの力を借りるから!」
「可憐さんの言う通りです、まふゆさんは凍らせる能力を発揮することだけに専念してください……! ……と、言ったものの可憐さん。具体的には、どうしますか――」

 瞳子さんは目を細めた――と思ったら、その目は驚いたみたいにかっと見開かれる。

「……え、ええっ、そんなやりかた、ありですか。う、うーん、でも確かにロジックの筋は通っています。魔女ってすごいですねえ。組織もちょっとこの破天荒さは見習ったほうがいいですよ」
「貴女……馬鹿にしている?」
「いえいえ、そんな、とんでもない」
「もう」

 可憐さんと瞳子さん。言葉こそそっけないやりとりだけれど、おふたりのやりとりは、興奮と親しさがあふれていた。
 私も、思わず笑ってしまう。くす、くすくすくす、と。

「えっ、どうしました? まふゆさん」
「いえ……おふたりのやりとりが、なんだか面白くって。微笑ましいなあ、って……」
「ちょっと、雑談している暇はないのだからね。やるわよ、瞳子!」
「了解です、可憐さん!」

 可憐さんは、スッ……と懐からご自身のサイリウムを取り出した。瞳子さんは可憐さんの思考を読んでこれから何をするのかがわかっているのだろう、迷いのない手つきでさきほどは可憐さんが飛ぼうとしていた手作り巨大サイリウムを手にした。……重そうなのに、よく片手で持てるものだ。

 ステージでは、いよいよ、ラストの歌が始まろうとしている。ファンの熱狂とともに……惜しまれながら……!

「最良のタイミングは――ラストの歌が、始まってからですね!」
「ええ、そうね。炎の精霊は、ラストの歌のときにこそ、この場を最も愛してくれるでしょう……!」
「私も、ラストの歌が始まった瞬間に――始めれば、いいですか?」
「そうですね」
「そうしてちょうだい」

 ステージではアツシくんが熱く言う。

「年越しの瞬間まで、あと三分。みんな、最後まで聴いてくれよな、俺たちシャイニングを変えてくれた、この曲を――『君がいるから、輝ける』!」

 シャイニングのファンであればもちろん誰しも知っている、シャイニングのファンでなくても知っているかもしれない、彼らの転機となった一番の代表曲が、ガンッ、と強烈なイントロとともに始まる――。

 わああああああっ。
 今日ここまでも、ライブはこの上なく盛り上がっていたのに――今日いちばんの質量の熱狂が、ぐわんと、会場いっぱいにあふれる!

「まふゆさん、いまです!」
「ええ、お願い! あとねまふゆ、貴女笑っていたほうが可愛いわよ」
「私は笑っていたほうがとは思いませんが、さっきのまふゆさんの笑顔が超可愛かったのは確かですね!」

 そして、おふたりは――腕を振り上げ、サイリウムを振りはじめた!