『ピンポーン』と、閑静な住宅街に控えめなインターホンが鳴る。
 お兄ちゃん、口うますぎだよ……
 うちから電車でひと駅と徒歩10分ほど。あれよあれよという間におしゃれな一軒家の前へ連れて来られてしまった。
 まんまと乗せられちゃった。まあ、特に予定もないしいいんだけど。
 若干の虚しさを覚えながら、応答を待つ。

『はいはーい。玄関まで入ってきていいよ♪』

 そして、インターホン越しに声が響いたとき強い風が吹き抜けていった。
 
「んえっ!?」

 一息遅れて驚きがやってきて思わず変な声が出てしまう。

「まあ、驚くよな」
「ど、どういうこと??」

 私は兄の後ろに隠れながら、今のは幻聴だったかもしれないと言い聞かせた。

「いらっしゃい!」

 門から玄関まで忍び足で進むと勢いよくドアが開いて。

「キミがニコちゃんだね?」

 登場したのは――明るい茶髪を肩まで伸ばした、見た目も話し方もチャラい男子だった。

「可愛いねえ」

 ぐいぐいと距離を詰めてこられて後ずさる。

「い……」
「胃?」

 身を屈めたチャラ男に顔をのぞき込まれ、私は大きく息を吸った。

「イメージと違うう!!」
「待て待て」

 逃げ出そうとしたら兄に腕をつかまれてしまった。