「高校生大会が開催されるっていうから出場するわ」

　翌朝のゴールデンウィーク初日に突然、兄が宣言した。

「えっ、ソロ？」
「いや、デュオ」

　ソロはひとり、デュオは二人組のことだ。

「友達と出るの？」
「まあな。これからそいつの家で打ち合わせするんだけど、一緒に来ないか？」

　そして、なぜか誘われてしまった。
　
「ええ？　私も行っていいの？」
「実はそいつがニコに会いたがってるんだよ」
「んん？　なんで？」
「おまえは本当、表情豊かだよな」
　
　驚いただけなのに、笑われてしまった。

「それ褒め言葉じゃないよね？」
「褒めてるよ」
「じゃあ、笑わないでよ」

　つられて私も笑ってしまう。

「会うだけ会ってみない？」
　
　笑みを収め、兄は真面目な顔をした。お兄ちゃんがそんな風に言うならたぶん悪い人じゃないんだろう。大事な大会の相方にするくらいだし。

「邪魔にならない？」
「ならないよ。むしろ力を貸してほしい。ニコはゲームに対する目が肥えてるからな」
「え？　そうかな」

　ゲームのことで褒められると照れちゃうな。

「そうだよ。だから、俺たちのサポートをしてくれたら助かる」

　持ち上げられて、まあ悪い気はしなかった。