まだ17年しかない人生の中で、至上の瞬間を知ってしまった。あの日、大切な友達と、恋人と、勝ち取った勝利。最高の、夏――

「お、おまたせしました!」

 上ずった声に瞼を開くと、目の前には白いワンピース姿の虹子がいた。 
 あー、可愛い。
 よそ行きの服装に、オレのためにオシャレをしてきたのかと思うと……たまらなく愛しくなる。

「海くん?」
「その服、似合ってる。可愛い」

 小首をかしげる彼女に、オレはニヤける口元を右手で隠した。
 
「そ、そういうことをサラッと言わないでください!」

 虹子はちょっと褒めただけですぐにテンパってしまうから、からかいがいがある。

「ダメなの?」
「だっ……めじゃ、ない、けど」

 そして、素直でわかりやすい反応を返してくれるから……そういうところがまた、可愛くて仕方ない。

「じゃあ、やめなーい♪」
「うぅ……海くんのいじわる」

 顔を真っ赤にしてうつむく虹子の手を取り、オレたちは歩き出した。

「本当に私が行って良かったのかな?」

 目的地へ向かう電車の中で彼女はオレを見上げた。

「春渡がそうしてほしいって言ったんだから、いいんだよ。でも、今度オレたちで何かお返ししようね」
「はい! ありがとうございます」

 嬉しそうな笑顔になっちゃって。
 ふんわりとした深茶色の髪へ、手を伸ばす。

「今夜は楽しもうね」
「そ、その言い方なんかやらしい!」
 
 頭を撫でると、虹子は両手で顔を隠した。