決勝大会当日。選手である兄とカイくんは前日から会場近くのホテルに泊まっていて。私は両親と車で会場へ向かった。
 ふたりとも、よく眠れたかな?
 睡眠時間をきちんと確保する生活をしていたから、それがルーティンになってると思うけど。
 むしろ、私の方が寝不足かも。でも、車の中で寝たからちょっとスッキリした。
 やれるだけのことはやったし。私はもう、見守ることしかできない。

「規模が大きくて驚いたわ」
「こんなところまで連れてきてくれるなんて、晴渡はさすが俺の子だよな」
「私たちの子ね?」
「そうそう、俺たちのな」

 会場に入ると、両親は急にはしゃぎ出した。ここに来て実感が湧いたのかもしれない。
 お兄ちゃんとカイくんは難なくこなしているように見えるけど、これはすごいことなんだ。
 私たちが座ったあとも、席がどんどん埋まっていく。会場の広さと観客の多さがそれを物語っている。
 まだ始まってもいないのに、ドキドキしてきた……
 カイくん、緊張してるかな?
 兄は緊張を楽しむ人だから心配ないけど、カイくんはどうだろう。
 私が渡したお守り、つけてくれてるんだよね。
 どうか、カイくんに力を与えてほしい。
 両手を握りしめ、私は願った。