「そんなこと自分で言うなよ」
 
 そうしたら予想外に叱られてしまった。

「虹子は何をしてもかわいいよ」

 しょげる私を、カイくんは破壊力ハンパない口説き文句で抱きしめてくる。
 ひゃー!!
 叫んでしまいそうになり、急いで口を閉じた。

「なんか、オレばっか好きみたいで不安になるんだけど」
 
 少し、挑発するような口調。
 カイくん、テンション上がってきてる?

「オレのこと、どう思ってるんだよ?」
「うう……」

 身じろぎするたび、カイくんの髪がサラサラと揺れてくすぐったい。
 
「言えよ」

 耳元でささやかれ、昇天寸前の私。

「す、好きすぎて無理」

 卒倒しそうになるところをカイくんが力強く支えてくれた。筋肉質な腕に、そういえば家にトレーニングルームがあると言っていたことを思い出す。そうして現実逃避をしないと今にも意識が飛んでしまいそうだった。

「やっと言ってくれた」

 ご満悦な様子のカイくんは、私の頬を愛おしそうになぞった。

「お願いがあるんだけど」
「はいっ??」
「大丈夫、リラックスして」
 
 カイくん、だんだん私の扱いに慣れてきたな……

「はい」

 深呼吸をして、目を合わせる。カイくんも息を吸い込んで。

「大会で優勝できたら、ここにキスするから。覚悟しといて?」

 そう言って、私の唇に人差し指を当てた。