「キミはオレの特別な存在なんだよ?」

 腕の力が緩み、切ない瞳で見つめられて。

「特別?」

 熱に浮かされたような思考で、聞き返す。

「虹子にとって、オレは“推し”のままなの?」

 両手で頬を包み込まれ、瞳が潤んで視界がぼやけていく。
 初めから、カイくんは素直に気持ちを伝えてくれていた。一線を引いていたのは私の方。その他大勢の中にいるうちは、傷つかないから。心のどこかでブレーキを踏んでいた。

『私だけを見てほしい』

 そんな気持ちが芽生えてしまわないように。
 でも……女子に囲まれたカイくんを見たとき、そう思ってしまったんだ。
 それが、恋なんだと――あなたが教えてくれた。

「ち、違うぅ〜」

 まるで子どもみたいな泣き方だと自分でも思うけど、涙がどんどん溢れてきてどうしようもなかった。

「自覚してほしかっただけなんだけど……」

 慌ててハンカチを出し、涙を拭いてくれるカイくん。

「ごめんね?」

 よしよしと、泣き止むまで頭を撫でてくれた。
 私のどこが良かったんだろ……?
 不思議に思いながら、整った顔に眼福(がんぷく)を味わう。

「ふふふ」

 だけど、抑えきれない笑みがもれてしまった……。

「キ、キモいですよね!」

 そう思われる前に、すかさず言っておく。