「オレのこと、必要としてくれてる?」

 一瞬目を逸らし、再び視線を送ってくる。

「もちろん! カイくんにどれだけ癒やされたことか」

 カイくんに、力強く同意する。

「そっか。……冷めないうちに食べようか」
「……? はい」

 でも、どこか浮かない表情になってしまって私は首をひねった。
 時々淋しそうな目をするのは、どうしてだろう?

 食事を終えて店を出ると、カイくんが腕時計をチラッと見やって。

「そうだ、ヘッドホン買いに行かないと」

 私は今日の目的をすっかり忘れていたことに気がついた。

「あー……それ、嘘なんだ」
「う、うそ?」
「デートする口実がほしかっただけ」
「ええ?」
「ニコちゃんは思ってることが顔に出るタイプだよね」

 私の手を取り、おかしそうに笑う。

「お兄ちゃんにもよく言われます」

 カイくんの手を、私は自然と握り返した。

「オレ、晴渡に恩返ししたいんだ」
「恩返し?」

 心地よいドキドキに身を任せながら、あてもなく歩く。

「いや、それだけじゃないか」

 気づくと川沿いまで来ていて、彼は突然立ち止まった。

「かいくん?」
 
 そして、強く抱きしめられて私は瞬きを繰り返した。

「好きだよ、虹子」
「――!」

 とろけてしまいそうな甘い声に、心臓がきゅっと締めつけられるように痛む。