「遠慮しないで、好きなもの頼んでよ」

 道の途中で見つけたファミレスに入り、向かい合って座る私たち。

「自分の分は払います」

 ごちそうすると言って利かないカイくんに、つい意地になってしまう。

「あんまり言いたくないんだけどね? オレが稼いでることはニコちゃんが一番わかってるんじゃないの?」

 と、痛いところを突かれて私はのけぞった。

「も、もちろんですよ」
「でしょ? じゃあ、そういうことで」

 カイくんの方が、一枚上手みたい……

「うう、ありがとうございます」
「ニコちゃんって負けず嫌いだよね。さすが晴渡の妹っていうか」

 なんだか嬉しそうに見つめてくるカイくんに観念してメニューを開く。

「晴渡には感謝しなきゃな」

 料理を待つ間、カイくんがつぶやいた。

「それは私も同じです。推しに会えるなんて思ってもいなかったから」
「推し、ねえ」

 彼は目を細め、私をじっと観察するように眺めた。

「にじいろさんはオレの初めてのフォロワーだからね」
「そうなんですか?」
「そうだよ。初回の配信、一番に来てくれたじゃん」
「まあ、確かにあの頃は私しかチャットに参加してなかったですね」
「そうそう。徐々に増えたけど、平和だったよね」

 私の前にパスタ、カイくんの前にピザがやってきて会話が途切れる。