「ごめん、スマホが」

 最後にぎゅっと腕に力を込め、私を離したカイくんは前かがみでスマホを拾い上げた。
 
「良かった、割れてな……」

 振り返ったカイくんが、私を見て目を見開いた。

「ご、ごめん。またやりすぎちゃった?」

 その場に座り込んだ私を、今度は心配そうに見つめてくる。確かにやりすぎ……だけど、鼻血は出ないから少しは免疫がついたのかもしれない。
 いや、問題はそこじゃない。

「し、心臓がもたないです」
「ごめんね」
 
 まっすぐに目を見返すと、カイくんは私の髪を優しく撫でた。

「とりあえず、どっか落ち着けるところで話そうか」

 手を引かれて、私たちは立ち上がった。
 
「あの人たちはいいんですか?」
「ほっといていいよ」

 そのまま手を握られ、歩き出す。
 ……制服姿、初めて見たな。やっぱりかっこいいな。すごくモテるんだろうな。
 さっきは、それを見せつけられて嫌だったんだ。

「制服デートだね」
「は、はい」 
「緊張してるの?」
「……はい」
「オレもだよ」

 真剣な声にカイくんを振り仰ぐと、つないだ手に力を込められた。