振り向くと、通行人を避けながら走るカイくんの姿と彼女たちが慌てて後を追う姿が目に入った。
 行っちゃった……
 周りの人は皆、ポカンとこの騒動を眺めている。
 戻ってくるのかな?
 でも、あの様子じゃ来ないかもしれない。ここにいたら、あの人たちに捕まっちゃうもんね。

「はあ」

 待つか、帰るか……迷ってぐずぐずしている間に待ち合わせの時間が過ぎてしまった。

『急にお腹が痛くなったので今日は帰ります。ごめんなさい』

 私は諦めてメールを送信し、駅前の商店街へ向かった。
 なんだろう……胸の辺りがすごくモヤモヤする。
 カイくんは約束を破ったわけじゃない。あの人たちが勝手についてきて、困ってたってことも会話からわかった。
 でも、こんな気持ちで会いたくない。それこそ私の勝手なんだけど……
 きっと、今の私はひどい顔をしてる。
 
「――!」

 スマホから音楽が流れて、体がビクッと反応した。
 このメロディは、カイくんからだ。
 でも、逃げてる最中なのでは……?
 つられて私も、目についたパチンコ店横の路地へ逃げ込んだ。
 
「は、はい」
『あっ、ニコちゃん! 大丈夫なの?』

 少し息を乱した吐息交じりの声に、つい聞き入ってしまう。

『ニコちゃん?』
「へっ? だ、大丈夫です」

 慌てて返事をすると、ホッと息を吐き出す音が聞こえた。