お兄ちゃんのせいで、変に意識しちゃうじゃん……
 改札を出てすぐにあるビルの入口前に、棒立ちする。
 待ち合わせ時間より早く着いちゃった。
 家電量販店があるというのもあるけど、うちの最寄り駅を待ちあわせ場所に指定してくれたからだろう。気づくと私は、改札を通る人々の中にカイくんの姿を捜していた。
 早く会いたいな……
 緊張しているけど、それ以上に募る想い。
 この気持ちが『好き』というものなの?
 でも、推しだよ?
 応援したいし、もっと多くの人に知ってほしいと思う。思う、のに――

「あっ」

 周りの人よりも頭ひとつ分飛び出た、カイくんが目に飛び込んできて心臓が跳ね上がる。手を振ろうとして上げた右手を、私は慌てて下げた。
 な、なんだあれ……
 人がはけて、カイくんの周りを数人の女子が囲んでいるのが見えた。キラキラ女子にギャル、清楚系やお色気担当に、両腕を奪い合いされて絵に描いたようなハーレム状態。
 これは、そういうことなの?
 私もあの中のひとりになれと?
 ……いやいや、私なんか無理でしょ。
 みんな可愛いもん、キレイだもん。
 なんか、泣きたくなってきた……
 気づかれる前に、私は後ろを向いた。