「まあ、あいつもたまにはいい息抜きになるんじゃない? 俺も久しぶりに休ませてもらうわ」
「うん」

 ふたりとも練習の鬼だったから、自由な時間は限られていたんだよね。好きでやってることとはいえ、時には休息しないとさすがにもたないだろうし。
 でも、その貴重な時間を私がもらってもいいのかな?
 
「カイは、いいやつだよ」
「うん?」

 兄の突飛な発言に、首をかしげる。

「真面目だし信頼できるよ」
 
 どうして今、そんなことを言うのか……兄の意図はわからないけど、思っていることは私も同じだった。

「うん、最初はレッドさんのイメージと全然違ってびっくりしたけど」
「あんときのおまえ、傑作だったからな」
「お兄ちゃん、ひどい」

 笑いながら、兄に向かってクッションを投げつける。

「でも、今はしっくりきてるかな。カイくんって、ちょっと天然だよね」
「おまえに言われたくはないだろうな」
「どういう意味?」

 投げ返されたクッションを受け止め、抱きしめる。
 
「カイのこと、好きなの?」

 これまた唐突な質問に、フリーズしかける。

「そ、そりゃあ推しですから」

 無意識に止めていた息を吐き出し、私は兄から目を逸らした。

「ふうん。まあ、俺はお似合いだと思ってるけどね」

 これが俗に言う“おせっかい”というものなのでしょうか?