「偉そうなこと言ってすみません!」 

 一気にしゃべったあと、カイくんがじっと見つめていることに気づいて我に返った。

「いや、ゲームの話になるとキャラが変わるんだなって」

 なんだかキラキラした瞳で見つめてくるんですけども!

「すみません! 私、ゲームのことになると熱くなっちゃうんですう」

 まぶしさに顔を逸らすとカイくんは私の頬を持って顔を正面に向けさせた。

「ごめんなさいい」
「怒ってないから落ち着いて。かっこいいって思っただけなんだ」

 ちょっ、キスでもしそうな勢いなんですけど!

「あっ」

 再びの流血に、カイくんの動きが止まった。

「カイ、興奮させすぎ」

 後ろから兄がティッシュを差し出してくれる。

「ごめんね」
「大丈夫、ですよ」

 しゅんとしてしまうカイくんに、鼻を押さえながらがんばって発音する。

「憧れの推しに会えて、勝手に興奮してるだけですから」
「ニコちゃん……」

 左手を伸ばし掛け、でもすぐにカイくんはその手をそっと下ろした。
 
「オレも、キミに会えてすごく嬉しいんだよ?」
 
 お世辞でもそう言ってもらえて、私は幸せだ。
 
「へへっ。ありがとうございます」
 
 ティッシュにまみれて照れ笑いを隠すと。

「平和だな」
 
 兄が、ポツリとつぶやいた。