「パッドならできるんですけど、キーボードは配置が全然わからないですね……」
 
 座ってみたものの、何をどうしていいかわからない。
 キーマウとはキーボードとマウスの略。パッドとはコントローラーのこと。家庭用のゲーム機に親しんでいる人は、キーマウの操作は慣れるまでは扱いが難しいのだ。
 
「じゃあ、一緒にやってみようか。マウス持ってみて」

 言われるままに右手をマウスへ置くとレッドさんが手を重ねてきた。

「ひぁっ!」

 大きくてあたたかい右手に嬉しみの悲鳴がもれてしまう。

「左手は、ここ」

 五指を操られ為す術もない。レッドさんの顔が頭上にあって、めちゃくちゃ近くて心臓がはち切れそうだよ……。

「レレレ、レッドさん!」
「ん?」
「む、無理です」

 また鼻血が出てしまわないよう、がんばってこらえているけど。

「もしかして、緊張してる?」

 上から顔をのぞき込まれ、限界を突破した私はチェアから崩れ落ちた。

「大丈夫?」

 とっても心配そうな顔をしてるけど。あなたが心臓に悪いことをするからですよ……。
 
「今度は何が起きた?」

 トイレから戻った兄が、腰を抜かした私を見下ろしてくる。
 っていうか、トイレ長くない?
 さては……人様の家で大をするなんてお兄ちゃんなかなかの大物だな。