そう言って兄は私の頭を撫で回した。

「いや、それは困る」

 すると、レッドさんは兄のお願いを拒否してきた。
 断った、だと……?
 髪を手ぐしで整え彼の様子をうかがう。

「急に身内話なんかしてごめん」

 目が合ったけど、すぐに逸らされてしまった。

「別にいいよ」

 兄はなぜかくすくすと笑っている。ふたりとも何を考えているのかよくわからない。

「ちょっと外すから、適当に寛いでて」

 レッドさんはソファを勧めると部屋を出て行ってしまった。

「なんか、掴みどころのない人だね」
「そうか?」

 ソファに並んで座ると兄は首をかしげた。

「どうして友達になったの? お兄ちゃんとはタイプが全然違うじゃん」

 知的メガネの奥にある、意志の強い兄の瞳をのぞき込む。

「そんなことはないと思うけどな? あいつとは気が合うし」
「……そうなんだ」

 言われてみれば、兄の高校は進学校で偏差値が高いんだった。レッドさんは顔と声だけじゃなくて頭も良いんだ。
 ただのチャラ男じゃなかったのか……

「あいつとは2年になってクラスが同じになったんだよ」

 そっか、高校生なんだよね。
 兄の話に、レッドさんが身近な存在だったことを再認識させられる。