秋になった。アニメは、季節ごとにラインナップが一新するのでこれからは秋アニメが始まる。これは面白そうだな、なんて思って
一話を見るところから始まる。そんな調子であるアニメを見た時に感じた。これが推しという感情だろうか?
私は、まだ自分の感情に理解が追い付いていなかった。だが、もしもこの感情を言葉に表すとすれば『推し』しかなかった。
なぜなら、私が思っていることは全て愛子が言っていることに似ているのだから。まず、私が気になったキャラクターは、主人公の
ようなポジションではない。主人公の仲間の一人で、言ってしまえば脇役のような存在だ。だが、そのキャラが出てくるシーンで
だけ、私の心が高鳴る。そしてそのキャラが喋ると、すごく感動した。この感情がどういった感情なのかはわからないが、いわば
恋愛に近いものだった。恋愛だって、気になる人がいればその人のことを自然と目で追ってしまうし、気になる人が喋っているのを
見かけたらそれだけで嬉しい気分になる。更には、その人のことをもっと知りたいと思うようにもなる。その結果が、愛子がいつも
言っているようなことになるのだろう。だが、心の中でそんなことを認めたくはなかった。それは、ついこの間まで、愛子の
ようにはならないと思っていた私が不意に推しにハマるなんてことがあるのは格好がつかないと思ったからだ。私はそんな
思いを心に秘めながら過ごした。だが、アニメが進むにつれて私の心は限界を迎えていく。そのアニメを見る時に、どうしても
好きなキャラを探してしまうし、見つけられると嬉しくなる。このまま、自分の気持ちに嘘をつくことはできない。
だからといって何か特別なことをしたわけではない。誰かに聞かれてもいないのに「あのキャラ良いよね」なんて話をする
気はないし、聞かれたら答える、程度にすればいいか、と思った。その代わり、ネットではそのキャラの情報を集めて、一人で
楽しんでいた。そんな風に日々を過ごしてはいたのだが、不思議な思いもあるもので、それだけでは物足りないと思うように
なってしまった。推しについて、誰かと話がしたいと思うようになってしまったのだ。私の推しているキャラは、正直に言って
世間的にはあまり人気がない。ネット上ではある程度話している人はいるが、ネットだけでは足りないと思ってしまった。