「マスター、大丈夫ですか? 心拍数の急激な上昇を感知しました」

「ありがとう、ナビ。問題ないよ。たぶん」

 とにかく、もうリィトは自由だ。

 この広大な大地で、のんびり過ごす準備は万端なのだから。

 農作業を終えた花人族たちが、リィトの周りに集まってきた。

 心配そうにこちらを見ている。

 背丈が小さく、子どもみたいな彼らの見た目に癒やされる。

「ム……アリガト?」

「アリガト?」

「アリガト……?」

 唯一知っている単語でコミュニケーションを果敢にはかるパーティーピーポーっぷり、嫌いじゃない。

「……とにかく」

 リィトは、こほんと咳払いをした。

「流通経路は確保したから、どんどん作物を作ろう。種子ならたくさんあるから、好きなモノを好きなだけ」

 リィトの言葉をフラウが他の花人族に伝えると、たちまちお祭り状態になる。なんか踊ってるし。

 やっぱりパリピだ、こいつら……とリィトは思った。

***


 それから一ヶ月もしないうちに、猫人族コンビがやってきた。

「リィトの旦那ァ! す、す、すごいことになったニャッ!」

「ふにゃぁ……もっと情報ないのかって聞かれまくりで、しらばっくれるのに疲れたのでありますぅ……」

 血相を変えてリィトの小屋に飛び込んできた。

 謎の種子Xの鉢植えを手入れしている最中だったリィトは、往復にかかる時間を考えるとほぼトンボ返りだったであろう二人にお茶を淹れてあげた。

 これは最近になって花人族が栽培をはじめたもので、リィトの手持ちの種子のなかでもけっこう値の張るものだ。

 茶葉の加工も花人族にとっては朝飯前のようで、たいへん美味な緑茶に仕上がっている。飲めばホッコリ。

「す、すごい売れ行きなのニャ!」

「えぐくもなく、酸っぱくもないベリー酒なんて史上初ですからにゃ~。すでに考察ギルドが色々と嗅ぎ回っているにゃ~」

「そうなのニャ! レシピとかでどころを聞かれまくるから、全部マンマに流しているのニャッ!」

「にゃふ~、わがはいはリィトに言われたとおりの、ちょぴっとの情報だけを小出しにしているのにゃ……客が勝手に熱狂してくれるのにゃっ」

「少しでも何か知りたい客が、商人ギルド(こっち)にまで探りをいれてきてるのニャッ! 色んな商品を買ってくれるから、売上がっぽがっぽだニャ!」