しばらく無言の時間が過ぎた。

「よくわからないが、お前に敵意がないことだけはわかった」

アズールは剣を下ろしカチンと鞘に戻す。
その音を聞いた瞬間、私はペタンとその場に崩れ落ちた。

「どうした?」

「ん?殺されてもいいって思ったけど、やっぱりちょっと怖かったみたい」

大きく息を吐くと目の前に手が差し出される。顔を上げるとアズールが眉を下げた。

「すまなかった」

その声に以前の冷たさはなく、私の心臓がきゅんと音を立てた。アズールの手に恐る恐る触れると、しっかりと握り返し立たせてくれる。

「シャルロットでいいのか?他に名が?」

「私の名前は菜子。ちなみに二十六歳」

「シャルロットは十八だが?」

「そ、それはしょうがないでしょう?不可抗力だわ」

ぷくっと膨れた私に、アズールは声も出さず小さく笑った。つられて私も笑顔になる。

今までの私たちの険悪な雰囲気はどこかに行ってしまったかのよう。アズールがそんな風に笑ってくれるのが素直に嬉しかった。