そこにはベッドやテーブルなどが配してある。
「ユリアはここを使うといい」
 部屋のランプに魔法の明かりをつけ、ニッコリと笑うジェイド。
「あ、ありがとう……」
 ユリアは窓に駆け寄り、外の景色を眺めた。見渡す限りの森が満月に照らされて静かに(たたず)んでいる。オンテークは魔の火山として人々に恐れられており、近づく者など誰もいない。確かに安全な棲み処ではあったが……、昨日まで王宮で暮らしていたユリアには少し心細く感じた。

「どうした? 不満か?」
 いつの間にか隣に立っていたジェイドに聞かれ、ユリアは焦って返す。
「ふ、不満なんて無いわ。ただ……ちょっと寂しいかなって……」
 そっと目を閉じるユリア。
「我ではダメか?」
 ジェイドは少し寂しそうにユリアを見る。
「そ、そんなこと……ないわ……」
 ユリアはほほを赤くしてうつむいた。
「ん? ちょっと見せてみろ」
 ジェイドはいきなりユリアが羽織っていたジャケットのボタンを外した。
 破かれたブラウスのすき間から胸元が露わになる。
「えっ!? 何するの?」
 焦って腕で胸を隠し、後ずさるユリア。
「いいから、見せてみろ」
 ジェイドはユリアに迫る。
「えっ!? えっ!?」
 ユリアは身をかわそうとして、不覚にもスツールにつまずき、ベッドに転がってしまった。
「逃げなくていい」
 ジェイドはそう言うとベッドの上でユリアの腕を押さえた。
 美しい切れ長の目に真紅の炎が揺れる。
「ちょ、ちょっと待って、こういうのは順序が……」
 ユリアは抵抗しようとしたが、ドラゴンの力は圧倒的で身動きができない。
 ジェイドの細く長い指がスッとユリアの胸に伸びる……。
 ひっ!
 ユリアは目をギュッとつぶる。
 ジェイドの温かい指づかいが優しく胸のあたりをスーッと()う。

「あっ……」
 ユリアの漏らした声が部屋に響く……。

 ペリペリペリ……。
 ジェイドはユリアの心臓の辺りに貼られていた、ごく薄いフィルム状のものをはがした。
 直後、ユリアは光に包まれる。
「えっ!?」
 ユリアは驚いた。失っていた神聖力が復活したのだ。
 身体を起こし、両手を向かい合わせにして気を込めると、以前のように激しい輝きが両手の間に戻ってきた。
「うわぁ……」
 ユリアは満面に笑みを浮かべ、その神聖な輝きに見入る。